家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

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普段はすぐに本の世界に入り込んでいくことができるのに、今日はそれが難しかった。
何度活字を追いかけても気がつけば視線は小窓の外へと向かっている。

とっくに青年の姿は見えなくなっているのに、気になってしかたない。
ソフィアは大きくため息を吐き出して本を読むことを諦めた。

読みふるした本の山の中にそれを置き、鉄格子の向こうにいるマルクへ話しかける。
「こじき狩りには行くの?」

普段ほとんどの質問を無視するマルクが以外にもすぐに振り向いた。

ずっと座り込んで本を読んでいると思っていたマルクの手にはしっかりと研がれたナイフが握られてソフィアは息を飲んだ。

「もちろんだ。こじきを捕まえれば金一封。ちょっとした小遣いになる」
マルクの目がギラギラと輝いた。

長年見張り役をしているだけだったマルクは本当に暇を持て余していたのだろう。
降って湧いてきた好条件の仕事にすっかり心奪われている様子だ。