家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

彼が街の民家に入り込んでなにかを盗み出している様子が手にとるように浮かんでくる。
同時にずっと胸の中にあったダンスしたときの熱が急激に冷えていくのを感じる。

私はあの窃盗犯にすっかり騙されていたんだ。
危うく心まで全部奪われてしまうところだった。

そんな悔しさが浮かんできて、同時に唇を噛み締めた。

小部屋に入れられてからずっと異性との交流はマルクと肉親くらいしかないソフィアは、すっかり舞い上がってしまっていたのだ。

そんな自分が恥ずかしくて、目尻に涙が浮かんできた。
ソフィアは手の甲でそれをぬぐい、視線を窓から部屋の壁へと移動した。

もう終わったことだ。
自分には関係のないこと。

自分自身にそう言い聞かせて、ソフィアは本を開き、活字の世界へと入り込んで行ったのだった。