家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

一瞬目が合ったと勘違いするくらい長い時間見つめ合ったような気がした。
だけど本当は時間にしてほんの数秒間だ。

青年はソフィアを見ていたわけではなく、付近に注意を払っていただけに過ぎない。
だけどその数秒間、ソフィアは自分の心臓が止まってしまったかと思うほどの衝撃を受けていた。

あの青年、見たことがある。
間違いなくパーティの夜にダンスをしたあの人なのだ。

マルクやエミリー以外の人間と会ったのはあの青年だけだから、見間違いようがなかった。
「でもどうして? あのときは王子様みたいな恰好をしていたのに」

そう呟いて感づいた。
もしかしてあの青年は誰かの服を奪い、パーティに参加していたんじゃないだろうか。

ソフィアのようにどうしてもパーティに参加したかったとは思えない。
きっと、もっと悪い理由があって参加したのだ。

今の青年の姿を見ると、そうとしか考えられなくなった。