家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

相変わらずのみすぼらしい恰好。
この恰好で外へ出れば、自分もこじきと勘違いされることだろう。

「まぁ、それは珍しいことじゃないな。今までだって、どっかからやってきたこじきはいた」
マルクの言葉にエミリーは頷く。

だけどすぐに表情を変えて、噂好きそうな意地悪そうな顔になった。
「そうだね。今までもそういう奴らがこの街に来ることはあった。その度に王様は結構な罰を与えただろう?」

「あぁ。街の景観が損なわれるとかで、すぐに牢獄行きになってるな。その後こじきたちがどうなったのか、誰も知らない」
「きっと処刑されてるんだよ!」

エミリーが声を大きくしたのでソフィアは思わず身を震わせた。
この国の王様がこじきを捕まえていることは知っていたけれど、その後処刑していたことは知らなかった。

事実かどうかはわからないけれど、そこまでされていてもおかしくはない。
王様はこの街の景観をとても大切にしていて、民家も商店もすべて似通った外観にするように決められている。