家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

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そっと玄関ドアを押し開けて家の中に入ったソフィアは廊下に点々と自分の足跡がついていくことに気がついてすぐに四つん這いになった。

ボロい服で廊下に汚れが残らないように拭き取りながら少しつづ少しづつ小部屋へ向かう。
廊下の角から小部屋を覗き見るとマルクがまだ大きなイビキをかいて寝入っていた。

素早くマルク横をすり抜けて自分から小部屋に入ると、鍵をかけてそれをマルクの腰に戻した。
一通りのことが終わってようやくホッと息を吐き出す。

家に入ったときから無意識のうちに呼吸を止めてしまっていた。
全身に冷や汗が吹き出していて気持ちわるい。

でも……。
ソフィアは小窓から外の景色を眺めた。

ほんのひとときでも、木の影に隠れていても自分もあそこにいたのだと思うと気分が高揚した。