家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

一番豪華な洋食品のついた馬車の中に、王子様がいるはずだ。
「ふんっ。王子様のくせに馬車を使うのか」

青年が鼻で笑うが、ソフィアには聞こえていなかった。
「王子様っていうのは白馬に乗って颯爽と登場するものだろう?」

ソフィアに無視されたのが癪に障ったのか、青年はしつこく聞いてくる。

ソフィアは左右に首をふって「本の中ではそういう人もいるけど、現実はわからない」と、視線を広場へ向けたまま答えた。

あの馬車の中から王子様が出てくるところをこの目で見たい。
だけどタイムリミットはどんどん近づいてきていた。

もうそろそろマルクが目覚めてしまう頃だ。
「残念だけど、もう行かないと」

王子様が馬車から降りてくる前にソフィアは帰宅することに決めた。
「嘘だろ。パーティはこれからが最高潮なのに?」