家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

エミリーは家の使用人で、主に掃除をしてくれている。
といってもソフィアの部屋に入って掃除をしてくれたことは1度もないけれど。

「エミリーこんにちは」
ソフィアが声をかけるけれど、エミリーは見向きもしない。

まるで視線を追わせたら呪われてしまうとでも思っているように徹底して無視してくる。
もしかしたら、本当に家族から呪われるとか、そんな風に吹き込まれているのかもしれない。

「なんだよ、気持ちよく寝てたのによ」
起こされたマルクが不機嫌そうな声を出して大きく伸びをする。

ようやく話し相手が起きてくれてソフィアの頬が少し柔らかくなった。
「今日は忙しいのに、よくそんなにのんびりしてられるね」

「忙しい?」
「隣国から王子様がやってくるんだよ。知らないのかい?」