家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

☆☆☆

マルクが眠ってしまってすっかり話し相手がいなくなったソフィアはもう何度も読み直した本をまた開いていた。

無実の罪で牢屋に入れられた王子様が、外にいる人達と連携を取ってどうにか無実の罪を晴らして真犯人を捕まえるというストーリーだ。

「いけ! やっちまえ!」
活字を追いかけながらつい声が出てしまう。

ソフィアにとって本は目の前でそ情景が浮かび上がってくるものだった。
今ソフィアの目の前では王子様と真犯人が剣を交えて戦っている。

もう少しで決着がつくというところで「マルク。あんたまたこんなところで寝てるの?」という声が聞こえてきて一気に現実に引き戻されてしまった。

目の前にある冷たい鉄格子にソフィアの心がスッと冷たくなる。
その向こう側に見えるのは眠っているマルクと、ホウキを握りしめたエミリーだった。