家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

そう言ったのはマルクだった。
マルクは今にも崩れ落ちてしまいそうなソフィアの体を支えて、桶の中に立たせた。

こうすることで小部屋が汚物で汚れる心配はない。
マルクがソフィアの体を拘束している間にママは泣いてどこかへ行ってしまい、戻ってこない。

視界に見えるのはマルクとイザベラとパパの3人だけだった。
パパは険しい表情だけどソフィアから少しも目を離さない。

そしてイザベラは口元にずっと笑みを貼り付けていた。
桶にたったソフィアの頭にマルクが袋をかぶせてきた。

鶏糞が入っていた袋のようでどくとくの匂いが鼻腔を刺激する。
それが意識を覚醒させる要因となった。

けれどもう事態は最悪の状況だ。
いくら叫んでもそれは声にはならないし、ロープはすでにソフィアの頭上にある。