65リットルよりも、笑って。





そしてそれは、時計の針が夜の10時を回ったとき。

手を握って頭を撫でて、頬を撫でて、そうしてふたりきりの時間を過ごしていると、ずっと半開きだった唇がゆっくりと動かされた。



「……れ…や、」


「蓮夜…?」


「……れ……や」



窓の外に蓮夜がいる、と。


心霊的なものを言い出したとは、俺には思えなかった。

なゆには本当に見えているのかもしれない。
本当に蓮夜がすぐ近くにいるのかもしれない。


そう思った俺は腰を上げて、窓のそば、カーテンを開けた。



「…いないみたいだな。おーい蓮夜、いるなら返事しろー」



キラキラと輝く街の光。

なゆはそんなものが好きでよく眺めていたから、このままカーテンを開けておくことにした。



「はは、俺には見えない。それになゆ、ここは4階だか───………、……な……ゆ…?」



振り向いて名前を呼んでも応答がない代わり、一定の横線が続いている心電図。


そこで気づいた、ピーーーという発信音。


それは心肺停止と、意味を持つもの。