65リットルよりも、笑って。





「命を救うはずの医者である俺が、神頼みしかできない。それくらい……なにも、なにもできないんですよ」



初めて会ったときよりだいぶ痩せて、顔色もよくない。


抗がん剤の副作用がありながらも毎日しっかり3食取っているはずだというのに。

しょっちゅうチョコやらケーキやらも食べては間食しているから、栄養が足りていないわけではない。


これは病的な体重減少だということは明らかだった。



「病気を救うことも、泣いている彼女を慰めてやることも…。医者ってこんなに……、こんなに情けないんですね」



なにも、できない。

こんなにも神を貶した俺が、結局は頼る先は神様だ。


そして近いうち必ずやって来る別れの覚悟など、到底できてもいないんだよ。


死なないと思っている。
こいつは半年後も1年後も5年後、10年後。

変わらずヘラリとしたイタズラな笑顔を俺に向けてくるだろうと。



「ごめん…、ごめん、なゆ…っ」


「…斑鳩くん」