65リットルよりも、笑って。





「病気じゃなかったとしても、誰だっていつどうなるか分からない。なにが起こるか分からない毎日は……誰もが同じことだから」



そこに私の場合は“病気”だと、“余命”だと、はっきりと名前が付けられただけ。

隠されていたフィルターを外されてしまっただけ。


命の終わりというものを、目に見える存在に変えられてしまった。


ただそれだけのこと。



「って考えられるようになった私、めちゃくちゃ成長してない?」


「…なゆ。すきだ」


「……急だなもう。びっくりするって」



好き、私もだよ。
でもごめん、先生。

その言葉だけはどうしても言えないみたい。


この人にとって私は道。

この先たくさんの命を救う存在になるための……近道くらいになれればいい。


私ね、それだけでしあわせなんだ。



「クリスマス楽しみだね。…泰斗くん」


「……その日、俺の───」


「あっ、なんかメッセージきた。…って、迷惑メールだし。先生、なにか言いかけてなかった?」


「…いや」



たぶん明日になったら私はまた同じ質問をしちゃうんだ。


この病院はクリスマス何かしないの?って。


うんざりしないでね、先生。

同じことをたくさん言うってことは、それくらい私自身は“覚えていたかったこと”なんだと思うから───。