「………だ……め」
だめ。
やだ、やだ、いやだ。
嬉しかった、幸せだった。
意地を張ってビンタをかましてしまったのは、ただの強がり。
慰めなんかじゃないでしょ、気休めなんかじゃないでしょ、そんなふうに遠回しに伝えていたの。
だから“違う”ってハッキリ否定してくれて、本当はすごく嬉しかったんだよ。
「あれは……私の…、たからもの…」
それを聞いて、ふわりと瞳を和らげたリハビリ担当。
「───…らしいよ、泰斗」
そんなのアリか。
はめたな、このやろう。
やっぱり佐藤 颯汰という男は信用しちゃいけないと。
物陰から姿を現したひとり。
私が掴まれていた腕を強引にも離してまで引っ張ってきた。
「近すぎんだよ」
いつからいたの。
いつから見ていたの、聞いていたの。
今日は先生もずっと外来を担当していたから、朝くらいしか話していない。
たったそれだけで久しく思うなんて、どーかしてる。



