65リットルよりも、笑って。





「………だ……め」



だめ。
やだ、やだ、いやだ。

嬉しかった、幸せだった。


意地を張ってビンタをかましてしまったのは、ただの強がり。

慰めなんかじゃないでしょ、気休めなんかじゃないでしょ、そんなふうに遠回しに伝えていたの。


だから“違う”ってハッキリ否定してくれて、本当はすごく嬉しかったんだよ。



「あれは……私の…、たからもの…」



それを聞いて、ふわりと瞳を和らげたリハビリ担当。



「───…らしいよ、泰斗」



そんなのアリか。

はめたな、このやろう。


やっぱり佐藤 颯汰という男は信用しちゃいけないと。


物陰から姿を現したひとり。

私が掴まれていた腕を強引にも離してまで引っ張ってきた。



「近すぎんだよ」



いつからいたの。
いつから見ていたの、聞いていたの。


今日は先生もずっと外来を担当していたから、朝くらいしか話していない。

たったそれだけで久しく思うなんて、どーかしてる。