65リットルよりも、笑って。





そんなこと、いっさい考えていなかった。

どうしてしてくるの、なんでしたのって、そればっかり。


明確な答えを迫っておいて、その答えに怯えている私は。


毎日変わらず話しかけてくれるのだって、顔を見に来てくれるのだって、本当は嬉しいくせに。



「嬉しくはなかった?あんなにしたがっていたキス、……なんだったら僕とのほうがいい?」


「…え、」


「してみる?僕と。今ここで僕として、泰斗とのキスなんか塗り替えようか」



本気だ。

たぶん、私がここでほんの少しでもうなずいたなら彼はしてくる。


あんなにもクールぶった男があそこまで優しいキスをしてくるなら、もしかすると佐藤先生はめちゃくちゃ激しいものをしてくるかもしれない。


そしたら完全に消えちゃうよ、忘れちゃうよ。

こんなショボい記憶力してる私なんだから、すぐ塗り替えられてしまう。