65リットルよりも、笑って。





誰かさんとは正反対で慣れ親しんだ笑顔をよく見せてくれるのが佐藤先生。

柔らかい茶髪だって、誰かさんの黒髪とは対立つ色だ。


どちらかというと甘いマスク寄りの佐藤先生は、今晩の私の話し相手になってくれるつもりらしい。



「なゆちゃん、野暮なことを聞くけど……昼間の話は本当?」


「え…?昼間……、えーっと、ゲームの話だっけ…?」


「…キス、されたって」


「ああ!言った言った!…ええと、んー、まあ大したことじゃないからっ」



佐藤先生にわざわざお知らせしてもって感じだよね。

でもあれは私がしたんじゃなく、されたの。

そこだけは本当に信じて。



「大したことだよ」



電気が消された休憩スペース。

自動販売機の明かりと、非常用階段の表記から漏れる緑色だけ。


そこまで真剣な顔をしていたとは思わず、見えていないふりをした。