「くるみさん。ほら…、蓮夜くんにお別れして」
「っ、……っ、はい…」
いちばん泣いていた看護師は、あまり面識はなかったけれど知っていた。
蓮夜を担当していた若い女性だ。
斑鳩先生とも関わりがあるみたいで、たまに2人で話しているところを私も何度か見かけている。
「お釈迦様、どうか蓮夜をめいっぱい褒めてあげてください」
ウィッグに合わせるように被った赤いニット帽。
病室に戻ってからの今日は、いつもより静かな1日を過ごした。
医者にとっての仕事は患者を治すことだけじゃなく、患者を見送ることもまた役目なんだと、今日初めて知った。
「蓮の花に囲まれた場所で……どうか優しくて、穏やかに」
夕暮れ空に祈って、私は気分転換に病室を出た。
「いいかげん泣き止め。俺たちの仕事は泣くことじゃない」
「…ごめん、なさい…、わかってます、」
「いちばん泣きたいのは……俺たちじゃないだろ」
「…はい」
「くるみ」と、また名前で呼んじゃってるよほら。
こんなところを見るなら気分転換なんかやめれば良かったな。
曲がり角の先、そのふたりは目立たない場所で慰め合っていた。



