とても、やさしい顔をしていたから。
まるでずっとひとりで味わっていた苦しみや辛さが身体からすべて抜けたような、そんな顔。
れんや、蓮夜って、私は何度も何度も名前を呼んだ。
「…もう、いい?おれ、すごく…ねむいの」
「……れん、や」
「おれね、いっぱいいっぱい戦ったよ」
だめ、だめだよ。
まだ生きなくちゃ。
ヒーローがいなくなったら、みんな困っちゃうよ。
そんなことはもう、言えなかった。
戦ったね、たくさん、いっぱい、誰よりも。
うん、もう、いいよ。
もういいんだよ………蓮夜。
ランドセルを背負えなかった君は、その小さな背中に背負いつづけた強大すぎる病魔を、もういい加減、下ろすべきだ。
「なゆ。オレのこと、忘れないでね」
それは夢だったのか、現実だったのかは分からない。
目が覚めた朝、私は変わりなく自分の病室のベッドに寝ていて。
その日だった。
小さくて強すぎるヒーローが、大好きなお父さんとお母さんの腕のなかで静かに息を引き取ったことを知らされたのは───。



