「よくドラマで見るやつだよ!抗がん剤?的なやつじゃねーの。まじウケるよな、ハゲてる女なんか無理に決まってんじゃん。
たぶんもうすぐ死ぬんじゃね?彼氏いるとか言ってたけど、あれぜってえ嘘だわ!高校も中退したとかさ、クソ笑えるだろ」
うん、クソ笑えるね。
ハゲてる女なんか無理だよね、知ってるよ。
とくに櫂くんは私のルックスを好きなってくれた人だったからなあ…。
ぐっと、爪が手のひらに食い込んで痛い。
「っ、」
そして血相を変えて飛び出そうとした研修医の腕、とっさに掴んで引き留めたのは私だった。
掴んだ腕からも伝わってくる。
すごくすごく怒っていること。
こーいうときは意気地なし発揮しないんだから困るよ。
だから両腕で掴んでまで、私は笑った。
「いいって先生。しょーがないよ。普通だよ、…あれが普通でしょ」
涙も出ないよ、もう。
悲しいとか悔しいよりも諦めみたいなもののほうが強い。



