先生はこのあと着替えて自宅に戻ってからご飯でしょ?
もしかすると家で待っててくれる奥さんが……いいや、それはないか。
「……ふはっ」
「…なんだ」
「いーえ?なんでもありませーん」
指輪、してないし。
結婚ってイメージがこんなにも湧かない人っているんだ。
仕事が恋人です、って人間にだけはなっちゃダメだよ先生。
そんなのしたら先生を狙っている女性たちがみんなして肩を落とすだろうから。
食堂から病室へと一緒に戻っているとき、ロビーの端に見慣れた後ろ姿を発見した。
「……まだ…いたんだ」
あれ?
そもそも櫂くんって、なんでこの病院に来てるんだっけ。
まあいっか、なんでも。
もうなんだっていーや。
「なあ、やべーんだけど。病気でさ、ハゲてたんだって!マジマジ!嘘じゃねーよっ」
誰かと電話をしているようで、ゲラゲラ笑っては、それはそれは楽しそうだった。
私たちの先、気づかない男子高校生は続ける。



