「…………姉さん。家、入ろう。」
「う、うん……。」
今にも曝け出してしまいそうな衝動をどうにか抑えつけ、家に入る。
自分でも分かるほど冷たい声になったのは許してほしい、しょうがない……と思っていた。だが今はそんな俺をぶん殴りたい。
「奈央……?どうかしたの…?」
家に入ってから誰が見ても分かるほど乱暴な動作しかしない俺に、優しい優しい天使な姉さんが訊いてきた。
……今思えば、本当に馬鹿だったと思う。八つ当たりなんてガキかよ、と。
だけど。あの時の俺は本当に無理だった。あのどうしようもない衝動を抑えるのは。
「……どうした、じゃないでしょ。」
絞り出したような声が出た。必死に抑えつけつけていたものが溢れたかのように。
「え??」
「どうした、じゃないだろっ!」
「っっ…」
溢れるものに流されるままに、叫んだ。
……本当に、今は心底過去に戻りたい。俺を、俺自身の手でボコボコにしたい。
「……ごめんなさい、なにか怒らせた?」
ぽつんと、困惑したような、悲しそうな声に、ハッと我に返った。
やってしまった、と理解した。
そんな馬鹿な俺に分かったのは、今は冷静にならないと、姉さんと一旦離れないと、ということだけだった。
「分かった……。おやすみ、奈央。」
ご飯はいらない、もう寝る。と最低な俺にも、姉さんは不恰好な笑顔で返事をしてくれた。
そんな暗く優しい声を背に、とてつもない後悔を感じながら自分の部屋に戻った。



