「な、奈央……。」


翌日の朝。支度をしながらも奈央を見る。

起きてきてから今の今まで、一音も発さない奈央に勇気をもって話しかけた。
私が起こしに行く前に自分で起きたし。小1の頃以来では?という感じだ。


「……なに?」

あれ??意外といつも通りのクールな奈央じゃ…?フツーの人には怒ってるように感じると思うけど、私には分かる。我が弟はいつも通りだ。


「えっと……。昨日は、ごめんなさい」

そう言うと、奈央が切れ長の目を見開いた

「な、んで……。なんで、姉さんが謝るの?」

「だって、奈央を怒らせちゃったし…。」

だから謝らないとって思ったんだけどな……。


「………………っ」


沈黙の中、奈央を見つめる。

——その時。

奈央がクシャッと完璧に整った顔を歪めた。泣きそうな、なんとも言えないような表情だった。




「———ご、めんなさい。ごめんごめんごめん。ごめん、姉さんッ。お、れが……。俺が、悪かったよ……」