次の日。
「——おい、おい漣〜。」
ハッ
「は、はい。なんでしょうか。」
「いや、珍しくぼーっとしてたな。大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。ご心配ありがとうございます。」
あー、久しぶりに先生に注意されたな。これも、“彼女”のせいだ
——昨日から、美奈ちゃんのことが頭から離れない
あの、くったない笑顔
あの、ころころ変わる表情
あの、優しい声色
ずっと僕の頭の中を占領している彼女
妖精みたいだ、と思ったんだ
なぜ“天使”ではなく“妖精”だと思ったのか?
それは、明るい笑顔なのにどこか儚くて、どこか人を惑わすような雰囲気で、不思議なオーラがあったからだと思う
僕のことを知らなくて、無邪気で、……ああ。僕、美奈ちゃんの良いところ、すごい出てくるじゃん
あの雰囲気のせいにしたかった。あの美貌のせいにしたかった。あの困った表情のせいにしたかった。“吊り橋効果”みたいなやつだって思いたかった
……でもさ、もう認めるしかなくない?
————昨日、僕は美奈ちゃんに恋したんだと。“一目惚れ”ってやつを、まさかのこの僕・漣駿はしたのだと。僕は美奈ちゃんという妖精に捕まったのだと


