冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う

(司side)

妹の事件が不起訴になり、俺は怒りで我を忘れ、罪から逃れた憎き東雲紀香を、自分の手で罰せようと考えた。

それがまさか、身代わりだったとはつい知れず。

時間が経つに連れ気持ちが落ち着いてくる。
それと共に自責の念も深くなる。

全く落ち度の無い無関係な少女に怪我を負わせてしまった。妹とそんなに歳も変わらないだろう。
か細い腕に赤切れだらけの指。それに栄養失調だと医師が言っていた。今までどのように過ごして来たのであろうか…。

東雲紀香の身代わりとなって来たのだから、彼女も紀香の被害者なのでは無いだろか?

未だ目を覚まさない、その血の気の引いたあどけない顔を見ては心が痛む。

「司様、お夕飯の準備が整いました。
こちらは一旦女中に任せ、お夕飯を召し上がって下さいませ。今夜は旦那様も帰っておいでですし、この方の事も旦那様にお伝えした方が良いのでは?」

俺の乳母である、千代がそっと声をかけて来る。

父に隠し通す訳には行かない。
彼女を怪我させたのは俺の責任だから、俺が責任を持って彼女の怪我が回復するまで面倒見るつもりでいるが、父の知らないところでコソコソするつもりはない。

「分かった。彼女の事は千代が見ていてくれ、何があったら直ぐ報告を。」

俺は彼女を千代に託し、夕飯を取るため食堂にと向かう。