麗しの狂者たち【改稿版】



「おい、いつまでそこに突っ立ってんだよ?」

「す、すみません!今どきます…………って、八神君!?」


暫くトイレの入り口を占領していたので、ついに苦情が来たのかと思いきや。

振り向いた先には、何故か顰めっ面の八神君が立っていて、私は思わず声を張上げてしまった。

「えと、トイレどうぞ。もう用は済んだので……」

とりあえず、彼女のことに触れることはせず、慌てて脇に避けると、私は一刻も早く席に戻ろうと踵を返す。


ここに八神君がいるということは、今席にいるのは亜陽君と白浜さんだけであって。

そのチャンスを白浜さんがみすみす逃すなんて、絶対にあり得ないと思う。

だから、隙を与えさせない為にも、早く戻らねばと。

私は逸る気持ちに、その場から駆け出そうとした途端。

不意に八神君に腕を掴まれ、反動で体が後ろに反れる。


「あ、あの。なんですか?」

「いいから、ここを出るぞ」


……………はい??


一体何の用なのか訝しげに尋ねたら、予想していたのとは遥か斜め上な返答が来て、私は一瞬目が点になる。


「何言ってるんですか?亜陽君が居るのにそんなこと……ちょ、ちょっと八神君!人の話を聞いてください!」

彼の要望を呑むわけにはいかず、抵抗してみたものの、引っ張られる力に敵うはずもなく。

そのままずるずると引き摺られるように、私は店の外へと連れ出されてしまった。