九条家との会食以降。

亜陽君によって新たに植え付けられた感覚を時折思い出しては、体が熱くなることが度々起こるようになってしまった。


亜陽君に上半身裸を見られてしまい、そこから胸を触られて、吸われて。

早々に大人の階段に踏み込んでしまった途端。

今までにないくらいの高揚感と恥ずかしさと、快楽が襲ってきて。更にその先を超えてしまったら一体どれ程に狂わされてしまうのか。


そんな想像をする度に体の奥が疼き出してきて、鼓動が早くなる……。



……。


…………だから、それがいけない!!



しかも、一瞬の隙に入り込む八神君にまで翻弄されてしまうとは。


この乱れに乱れまくったはしたない自分が、生徒会副会長を勤めているだなんて断じてあってはならないし、そんな私を心から慕ってくれる渚ちゃんにも顔向け出来ない。



なので、正さなければ。 


八神君に出会う前の、もっと健全で清らかな自分に戻さなければ。


これ以上堕落するなんて、絶対にあってはならないから。



「そういえば、副会長は今度の祝日予定はありますか?」
 

そう心の中で決意を固めている私の心境なんて露知らず。

期待に満ちた眼差しを向けながら尋ねてきた渚ちゃんの唐突な質問に、私は一瞬目が点になった。


「えと……。いいえ、特にありませんよ」


それから、直ぐにスマホを取り出してスケジュールを開き、何も登録されていないことを確認すると、渚ちゃんの目が益々輝きだす。


「それでは、一緒にここ行きませんか!?」


すると、突然目の前にスマホを掲げられ、画面に注視すると、そこにはポップな字体で大きく“お肉グルメ選手権“と記載されていた。


「何人か声を掛けてみたんですけど、皆予定があって。でも、私お肉大好きだからどうしても諦めきれなくて。なので、もし倉科副会長がよろしければ、是非ご一緒して頂けると嬉しいです!」


そう力みながらぐいぐいと迫る渚ちゃんの気迫に若干押されながらも、こういう場所は初めてなので、段々と興味が湧いてきた私は快く首を縦に振る。 

 
「お誘いありがとうございます。それでは、今度の土曜日よろしくお願いします」


そして、これまでずっと悶々とした日々を過ごしていたので、これが良い気分転換になるような気がして。


絶妙なタイミングで声を掛けてくれた渚ちゃんに心からの感謝を込めて、私は満面の笑みを向けた。