「八神君、話が違います!」
それから、暫くして僅かな隙が出来、私はすかさず顔を背けてから、ようやく言いたかった台詞をここで思いっきり叫ぶ。
「だって、今あいつの事思い浮かべてただろ。ムカつくんだよ、そういうの」
すると、不服な表情を見せながら完全に思考を読まれていることにぐうの音も出ず、つい視線が泳いでしまう。
そんな動揺する私の頬を掴み、強制的に視線を合わせられた視界には、整った眉を吊り上がらせた綺麗な八神君の顔が一杯に広がり、自制していても鼓動が高鳴っていく。
「俺だけに集中しろ。余計なことは考えるな」
そして、命令する彼の声には、魔力でも宿っているのか。
配慮もなにもない身勝手な振る舞いなのに、何故か目を離すことが出来ず、その言葉通り私の頭にはいつの間にか亜陽君の存在が掻き消されていた。
「……八神君」
呆然とする中、自然と彼の名が口から零れた途端、それに応じるように八神君は再び唇を重ねてきた。
同時に、午後の授業開始を告げる本令が鳴り響く。
もう、ダメだ。
完全に終わった。
それは、授業に対してなのか。
それとも、彼の魅力に狂わされた私自身に対してなのか。
この際どちらでも構わないと。
投げやり状態となってしまった私は、抵抗する事はやめて彼の欲求を全身で受け止める。


