麗しの狂者たち【改稿版】

「それじゃあ、その調教されたキスを俺にもしてみろよ。それで満足したら解放してやるから」

それから、ただの脅しでしかない要求を投げられてしまい、私はそれを受け止めることなく暫くその場で硬直する。

その時、ついに予鈴が鳴り響き、いよいよ戻らなければ完全に遅刻となる事態に、慌てて八神君の体を押し退けた。

「そんな事言ってないで早くここを出ましょう。授業に遅れますよ!」

「だから?」

咄嗟に忠告するも、全くもって響いていない彼の言動に、私はハッと気付く。

そうだった。
この人は校則なんて関係ないんだった……。

相手が不良男子ということをすっかり忘れていた私は、諦めたようにがくりと項垂れる。

「そんなにここを出たいなら早くすればいいだろ。しないなら、それはそれで好き勝手にするから別にいいけど」

すると、隙を狙った八神君の手が突然太腿に触れ、そのままスカートの中に侵入しそうになるのを、私は反射的に阻止する為彼の手首を掴む。

「ど、どこ触ってるんですか!?」

「好きにしていいんだろ?」

「そんなこと一言も言ってません!」

無反応なのをいいことに、勝手に解釈されて体を触ろうとする彼の最低っぷりに、怒りでつい声を荒げてしまう。

けど、その効果は当然あるはずもなく。
しかも、かなり力を入れて抑えているのに、それをものともしない彼の手はどんどんスカートの奥へと侵入していき、益々危機感が募り始めていく。


だめ、このままじゃ……!


「分かりました!キスしますから、手を離してください!」

危うくスカートの中に手を入れられそうになる手前。

防衛本能が働いた私は咄嗟に彼の要求を飲むと、八神君はほくそ笑み、言われた通り手を離して、何も言わずに私の目をじっと見つめてくる。

その視線の意味が瞬時に読み取れた私は、生唾を飲み込むと、胸元を押さえながら、今ここに居ない愛しの彼を思い浮かべた。


……ああ、亜陽君ごめんなさい。

この場所で沢山のキスを教えてくれたのに、私は今あなたを想いながら、違う人とキスをします。


そして、教会の前で懺悔する罪人のような心境に陥りながら、覚悟を決めて目を瞑る。

その瞬間、こちらがするよりも先に、八神君の方から唇を重ねられてしまい、予想外の事態に思わず目を大きく見開く。


は、話が違う!

そう訴えようとするも、唇の隙間から八神君の舌がぬるりと滑り込んできて、あっという間に絡め取られてしまい、あの時のように縦横無尽に暴れ始める。

しかも、後頭部をがっちり押さえられているので、上手く呼吸をする事も出来ず、息苦しさに思考がどんどんと奪われてしまう。