こうして、かれこれ数分は経っただろうか。
運動音痴な私は持久力なんて当然持ち合わせておらず、スタミナが切れそうになる手前、あっけなく亜陽君に捕まってしまった。
「嫌、離して亜陽君!」
だから、ここはもう悪あがきをするしかないと。
私は涙を溢しながら彼から逃れようと必死に腕を振る。
しかし、暴れる私に対して亜陽君は落ち着いた様子でこちらを見据え、完全にスタミナが切れたところを見計らって、私の体を包み込むように優しく抱き締めてきた。
「美月、もしかして昨日の事知ってる?」
そして、耳元で囁かれた的を射た質問に、体の動きがピタリと止まり、暫くしてから無言で頷く。
「そっか。だから、今日一日様子が可笑しかったんだね」
それなのに、浮気現場を目撃されたにも関わらず、一向に取り乱すことなく平静を保ち続ける亜陽君。
そんな彼のことが益々分からなくなり、私は眉間に皺を寄せて彼を睨み付ける。
「亜陽君は私を愛してるんだよね?それなのに、知らない女性と裏であんな如何わしい事をしていたなんて……。これって立派な裏切り行為だよね?」
本当は心の奥底に沈ませて、一生言葉にしないつもりでいた。
八神君とキスをしてしまった私に、そんなことを言う資格なんてないから。
けど、沸き立つ怒りと嫉妬心のせいで理性なんて働かず、私は思いの丈をそのまま亜陽君にぶつけてしまう。
それから、全てを吐き出すと、軽い酸欠状態に陥り、私は肩で息をしながら亜陽君から視線を逸らした。


