季節は間もなく十二月に差し掛かるところ。


校門前には赤と緑が織り成す沢山のポインセチアが私達を迎えてくれて、この光景を見る度にクリスマスが連想される。


その内中庭には大きなクリスマスツリーが飾られ、郊外もライトアップされるので、その色は更に濃くなり、加えてこの時期になるとカップルも急激に増えてくる。




「ああ、私も彼氏が欲しいっ!」


そして、こんな話もそこかしこで飛び交うようになり、周囲の目がギラつき始めるので、若干の恐怖を感じてしまう。


「倉科さんは良いよね。あんな王子様みたいな人の許嫁なんて」


「そういえば、最近倉科副会長は九条会長により愛されているって噂されてますよ」


「そ、そうですか。それは大変恐縮なことです」


そんな中、偶然出入り口で蜂合ったクラスメイト達とたわいもない会話をしていたら、やはり話題は恋人話へと切り替わり、私は舞い上がる気持ちをあまり表に出さないよう最大限の気を払った。



すると、突然周囲にいた女子生徒達が騒めき出し、所々で黄色い声が上がり始める。 


そして、これまで色恋話に夢中だったクラスメイト達でさえも、会話を中断して、ある方向に視線を一点集中させる。


その矛先にあるのは一体何なのか。


それは、確認せずとも分かる程この光景はよく目にしており、私もとりあえず周囲に合わせて皆が注目する人物に視線を向けた。