午後の授業が終わり、今日も夕方から生徒会の仕事があるため、私はクラスメート達と少しお喋りをしてから教室を後にする。
あれから亜陽君と顔を合わせるのは少し気まずいけど、とりあえず普段通りを心掛けようと。
自分にそう言い聞かせながら、生徒会室に続く通路を歩いていた時だった。
「……あ」
丁度職員室から出てきた八神君と蜂合い、思わずそこで足が止まる。
向こうも私の存在に気付くと、ポケットに手を突っ込んだまま、何やらこちらを凝視してきた。
「あの……何か?」
何故無言で見つめられているのか理解出来ず、しかも顔を見るとまたあの濃厚なキスを思い出してしまうので、私はつい視線を足元に落としてしまう。
すると、八神君の長い指が不意に伸びて私の顎に触れると、無理矢理顔を引き上げられ、至近距離にある鋭く光った澄んだ瞳が私の瞳を捉えてくる。
「や、八神君!?こんな所で一体何を……」
その熱い眼差しに脈打つ鼓動が徐々に早まり、顔の温度が一気に上昇していく。
もしや、またキスをされるのではと危機感が襲うのに、まるで金縛りにでもかかったように八神君の綺麗な瞳から目が離せなくて、逃げたくても逃げられない。
暫しの間黙って見つめ合う中、戸惑う私の様子に八神君は小さく鼻で笑うと、何事もなかったように私から手を離す。
「いや、案外元気そうだなって思っただけ」
それから、意味深なことをポツリと言い残し、そのまま八神君は私の横を通り過ぎて何処かに行ってしまった。
ようやく彼から解放された私は気持ちを落ち着かせようと試みるも、連日八神君に触れてしまったせいで、なかなか平常心を取り戻すことが出来ない。
一体八神君は何故私にあんなことをするのか。
おそらく、彼のことだからただ揶揄っているだけなのは分かるけど、その度合いが酷くて昨日から翻弄されっぱなしだ。
そして、またもや完全に抵抗出来なかった不甲斐ない自分を目の当たりにしてしまい、再び小さな怒りが沸々と込み上がってきた。
「ねえ、今の何?」
その時、背後から突然誰かに話しかけられ、肩が大きく震える。
しかも、思い当たる人物の声に私は冷や汗を垂らしながら、恐る恐る後ろを振り返った。
「……あ、亜陽君」
案の定。
そこに立っていたのは、眉間に皺を寄せながら日誌を手に持つ彼の姿。
しかも、最悪な場面で出会してしまったことに、私は内心焦りながらどうこの場を切り抜けようか頭をフル回転させる。
「えと……。昨日八神君の非行現場に遭遇して注意したら、目を付けられたと言うか……」
そこまで至るのに経緯が色々あり過ぎて、ましてや真実なんて到底口にすることが出来ず、その先の言葉を探ってみるもなかなか後に続かない。
「美月、ちょっとこっち来て」
そんな言い淀む私の手首を亜陽君は不意に掴んできて、そのまま私を引っ張り職員室とは反対方向に歩き出していく。
「あ、亜陽君どうしたの?日誌は提出しなくていいの?」
「いいから」
こんなに強引な彼も初めてのことで。
不安気にぶつけた私の質問を亜陽君は無表情で一掃すると、それ以上口を開くことなく、私はそのまま空き教室へと連れられてしまった。
あれから亜陽君と顔を合わせるのは少し気まずいけど、とりあえず普段通りを心掛けようと。
自分にそう言い聞かせながら、生徒会室に続く通路を歩いていた時だった。
「……あ」
丁度職員室から出てきた八神君と蜂合い、思わずそこで足が止まる。
向こうも私の存在に気付くと、ポケットに手を突っ込んだまま、何やらこちらを凝視してきた。
「あの……何か?」
何故無言で見つめられているのか理解出来ず、しかも顔を見るとまたあの濃厚なキスを思い出してしまうので、私はつい視線を足元に落としてしまう。
すると、八神君の長い指が不意に伸びて私の顎に触れると、無理矢理顔を引き上げられ、至近距離にある鋭く光った澄んだ瞳が私の瞳を捉えてくる。
「や、八神君!?こんな所で一体何を……」
その熱い眼差しに脈打つ鼓動が徐々に早まり、顔の温度が一気に上昇していく。
もしや、またキスをされるのではと危機感が襲うのに、まるで金縛りにでもかかったように八神君の綺麗な瞳から目が離せなくて、逃げたくても逃げられない。
暫しの間黙って見つめ合う中、戸惑う私の様子に八神君は小さく鼻で笑うと、何事もなかったように私から手を離す。
「いや、案外元気そうだなって思っただけ」
それから、意味深なことをポツリと言い残し、そのまま八神君は私の横を通り過ぎて何処かに行ってしまった。
ようやく彼から解放された私は気持ちを落ち着かせようと試みるも、連日八神君に触れてしまったせいで、なかなか平常心を取り戻すことが出来ない。
一体八神君は何故私にあんなことをするのか。
おそらく、彼のことだからただ揶揄っているだけなのは分かるけど、その度合いが酷くて昨日から翻弄されっぱなしだ。
そして、またもや完全に抵抗出来なかった不甲斐ない自分を目の当たりにしてしまい、再び小さな怒りが沸々と込み上がってきた。
「ねえ、今の何?」
その時、背後から突然誰かに話しかけられ、肩が大きく震える。
しかも、思い当たる人物の声に私は冷や汗を垂らしながら、恐る恐る後ろを振り返った。
「……あ、亜陽君」
案の定。
そこに立っていたのは、眉間に皺を寄せながら日誌を手に持つ彼の姿。
しかも、最悪な場面で出会してしまったことに、私は内心焦りながらどうこの場を切り抜けようか頭をフル回転させる。
「えと……。昨日八神君の非行現場に遭遇して注意したら、目を付けられたと言うか……」
そこまで至るのに経緯が色々あり過ぎて、ましてや真実なんて到底口にすることが出来ず、その先の言葉を探ってみるもなかなか後に続かない。
「美月、ちょっとこっち来て」
そんな言い淀む私の手首を亜陽君は不意に掴んできて、そのまま私を引っ張り職員室とは反対方向に歩き出していく。
「あ、亜陽君どうしたの?日誌は提出しなくていいの?」
「いいから」
こんなに強引な彼も初めてのことで。
不安気にぶつけた私の質問を亜陽君は無表情で一掃すると、それ以上口を開くことなく、私はそのまま空き教室へと連れられてしまった。