麗しの狂者たち【改稿版】



それから、もう一度目を瞑った後の時間はあっという間で。

体感的にはまだ五分くらいしか経っていないと思っていたのに、アラーム音が私の直ぐ脇で鳴り響き、夢現の状態でスマホを探る。

そして、アラームを止めてから時刻を確認すると、それなりにいい時間となっていて、私は小さく息を吐いた。

たった三十分ではあるけど、その間大分深い眠りについていたようで、頭の中が少しすっきりして、気持ちも大分マシになった気がする。

それに、そろそろ戻らないと皆に迷惑がかかるので、いい加減起きなければと。
私は体を起こし、ベッドから降りようとした時だった。

突然保健室の扉が開き、びくりと小さく肩が震える。

もしかしたら先生が戻ってきたのかと、カーテンの隙間から様子を伺った途端、思わずその場で固まってしまった。


視線の先に映るのはこちらに向かって来る亜陽君の姿で、予想外の人物に私は慌ててベッドに潜って目を瞑る。


すると、カーテンの開く音がして、すぐ側で亜陽君の気配を感じた途端、私の頬に彼の指がそっと触れた直後。

優しく掌で包み込まれ危うく反応してしまいそうになるのを堪えながら、私はされるがまま寝たフリに徹する。


「……ねえ美月。どうして急に俺を避けるの?今までそんなこと一度もなかったよね?」

そんな中、眠っている私に語りかけてくる亜陽君のとても弱々しく悲しげな声。

あの時とった私の行動が、相当ショックだったのか。
ここまで傷付けてしまったことに、胸の奥がチクリと痛み出す。

「こんなに君を愛してるのに……」

続けて一間置いてからポツリと溢れた亜陽君の言葉に、私の鼓動が大きく脈打つ。

昨日の浮気現場を目撃して以降、亜陽君の気持ちに疑いを持ち始めてしまったけど、それを覆すような状況に心が騒めき始める。

眠っている私に語りかけるくらいだから、おそらく亜陽君の今の言葉は本心なのかもしれない。

朝も亜陽君を置いて先に登校したら凄く怒っていたし、具合が悪い私の元に慌てて駆け寄って来てくれた。

改めて振り返ると亜陽君の愛情がじわりと見に沁みてきて、これまで取った自分の行動は過ちだったのではないかとさえ思えてくる。