麗しの狂者たち【改稿版】




「失礼します」

我武者羅に走ったせいで呼吸が整わず、私は浅く息をしながら保健室の扉を開くと、中はがらんとしていた。

確かに、今はまだ登校時間だし、こんな時間から具合が悪ければ普通は家に帰るだろうと。

そう自分に突っ込みを入れると、私は誰も居ない保健室で立ち往生する。

勢いで駆け込んだものの、これまで保健室は一回も利用したことがなく、ましてや体が元気なのに果たしてベッドを勝手に使っていいものなのか。

暫くの間自問自答を繰り返してはみたが、やはり今の心理状態で戻るのは気が引けて。

とりあえず、もし誰かが来たら適当に理由を付ければいいかと結論に至った私は、一番奥のベッドに潜り込み、カーテンを閉めた。


外は登校する生徒達で賑わっていたけど、保健室の中はとても静かで、聞こえてくるのは壁掛時計の秒針音ぐらい。

その規則的な音色が妙に心地好く感じ、締め付けられていた胸が徐々に緩み始めていく。

それから段々と睡魔が襲ってきた私は、ゆっくりと瞼を閉じて小さく深呼吸をした。

昨日は八神君のせいでほぼ一睡も出来なかったし、生徒会の仕事で朝も早かったせいで、このままだとお昼まで眠ってしまいそうになる。

流石にそこまで居座るつもりはないし、仕事も途中で投げ出してしまったので、せめて授業が始まる前には戻ろうと。

今になって罪悪感が襲ってくるけど、一先ずスマホのアラームをセットして三十分くらい休むことにした。