麗しの狂者たち【改稿版】



ど、どうしよう。

まさか本当にこの後八神君と大人の階段を登ることになるのだろうか……。


悶々とした気持ちが消えぬまま、私は広い浴槽の中体育座りをして身を縮め込ませる。

浴室は檜のいい香りに包まれていて、窓から見える満点の星空が何とも絶景なのに、八神君のせいでそれを十分に堪能することが出来ず、頭の中はこれからのことで一杯だった。


あの勢いだと、間違いなく彼は有言実行する。

勿論、八神君に触れられることは全くもって嫌じゃないし、少しの期待があったことも否定出来ない。

けど、いざその時が来るとやっぱり少し怖くて。
経験豊富そうな彼とは違い、私はどうすればいいのか全く分からない。

そんな期待と不安が入り混じる中、段々と体が熱ってくるの感じた私は、そろそろ出ようと浴槽から立ち上がる。

そして、脱衣所で体を拭いて用意したパジャマに着替えようと籠に手を伸ばした瞬間。
そこには見慣れない白いバスローブが置いてあり、動きが固まる。

「あれ?着替え確かにここに置いたんだけど?」

辺りを見渡しても用意したはずのパジャマは何処にもなく、更に言うなれば下着もなくなっている。


……まさか。

そこでピンときた私は怒りケージが一気に上昇し、急いでバスローブに着替えると、勢いよく浴室から飛び出した。


「八神君!私の着替えと下着、黙って持ってったでしょ!?」

「あー。だって邪魔になるだろ?」

それから、リビングでテレビを見ながらくつろいでいる彼に思いっきり怒号を飛ばすも、八神君には全く響いていないようで。しれっとした態度でそう言い返されてしまった。

「もう本当に最低!八神君の変態!」

それが余計に腹立たしくて、これでもかと罵声を飛ばしたけど全て逆効果となり、八神君は楽しそうな目でこちらを眺めてくる。

「ああ、そうだな。それじゃあ、俺も風呂入ってくるから大人しくベッドで待ってろよ」

しかも、平然と開き直り、高校生らしからぬ大人の余裕まで見せてくるものだから、これ以上何も言うことが出来ない。

こうして、相も変わらず八神君の掌で転がされている状況だけど、抗えないことが悔しくて、私は不貞腐れるように寝室へと向かった。