麗しの狂者たち【改稿版】

すると、多数の生徒が登校する中、一際異彩を放つ人物が目に留まり、その瞬間、これまで笑顔を作っていた表情筋がぴきりと固まる。

そして、無条件で体が震えだし、血の気もどんどんと引いてきて、私は思わず後退ってしまった。


あの人は確か昨日亜陽君と濃厚な絡みをしていた女子生徒。

あの時は顔がよく分からなかったけど、こうして改めて見るとなんて妖艶で美しい人なのだろう。

目はビー玉のように大きく、下唇がかなりぷっくり膨れてツヤツヤしていて、口元にある黒子が更に色気を醸し出す。

加えて、胸の位置まである緩く巻かれた薄茶色の髪と、同姓でも目がいってしまう程の豊満な胸に、しなやかな腰。

リボンの色からして同学年なのは分かったけど、あんなグラマラスな人が同い年だなんて信じられない。

そんな人と亜陽君が、昨日あの場所であんなことをしていたなんて。

あの時は二人の絡みを見ていられなくて逃げ出してしまったけど、あれから亜陽君はあの人とどこまでの事をしたのだろう?

服もはだけていたし、何やら艶かしい雰囲気を漂わせていたし、今にも不純異性交遊が始まろうとしていた。

まさか、あの後ずっと女性とあれ以上のことをしていたのだろうか。


「……うっ」

そんな良からぬ想像がどんどんと私の脳を支配していき、再び襲ってきた絶望感に涙腺が今にも崩壊しそうになる。


ダメ。
これ以上ここに立っていられない。
あの女性を見た後に、亜陽君を見てしまったら今この場でどうにかなってしまいそうになる。


「倉科副会長?どうしました?顔色が真っ青ですよ!?」

すると、向かいに立っていた渚ちゃんは私の異変にいち早く気付くと、緊迫した様子で駆け寄ってきて、顔を覗き込んでくる。

「美月!?大丈夫!?」

そして、渚ちゃんの声を聞きつけた亜陽君も、焦った表情でこちらに駆け寄ってきたので、思わず体が強張ってしまう。

「嫌!触らないでっ!」

それから、あろうことか。

おそらく人生で初めて私は、亜陽君から差し伸ばされた手を咄嗟に拒んでしまった。

その状況にその場にいた全員が驚き、一瞬だけ空気が凍る。


「……あ。ごめんなさい。……あの、ちょっと気分が優れないので保健室で休ませて下さい!」

一先ず、ここを切り抜ける為にはもう逃げるしかないと。

そう結論に至った私は、体調不良と言ったくせに、それを自ら覆すような勢いで走り出し、その場を後にした。