麗しの狂者たち【改稿版】



体育館に到着すると、既にそこは人で溢れかえっていて、あまりの人口密度の高さに一瞬面を食らってしまう。

亜陽君ファンが多い事は知っているけど、それにしてもこの数は異常な気がして。

見事前列は女子生徒達で全て埋め尽くされてしまい、入り込む隙がない状態に私はがっくりと肩を落とした。


けど、応援すると約束した以上諦めるわけにはいかず。

何とか観戦出来るスペースはないか四方八方見渡すと、ニ階エリアにまだ余力があるのを見つけ、私は踵を返して駆け足で階段を登る。


こうして、ようやく亜陽君達のコートが見える場所まで辿り着き、私は安堵の息を吐いてから視線を下に向けた途端。
ある人物が目に止まり、思わずその場で固まってしまった。


……え?八神君?


なにかの見間違いかと思って目を擦ってみるも、あの目立つ赤いメッシュ頭はどこからどう見ても彼でしかなく。 

サッカーチームに所属しているはずの彼が何故ここに居るのか理解出来ない私は軽い混乱を覚えると、突如隣から女子達の黄色い声が聞こえてきた。


「なんか一人怪我したみたいで、急遽八神君が代理出場することになったんだって」

「マジか!?九条君と八神君の直接対決なんて神じゃん!だから、こんなに人多いんだ」


そして、絶妙なタイミングで八神君の話が耳に入り、私も納得しながらコートへと視線を戻す。


その先に映るのは、青いユニフォームを来て試合前の軽いウォーミングアップをしている亜陽君の姿。

元々経験者なので、ドリブルからシュートまでの動作がとても滑らかで、彼が動く度に黄色い歓声が上がる。

一方、向かいのコートでも赤いユニフォームを着た選手達がゴールの周りでシュートやドリブル練習をする中。 

脇でストレッチをしている八神君を一目見ようと、彼の近くにはかなりの人集りが出来ていた。


去年八神君は欠場していたので、ここまでの騒ぎになるようなことはなかったけど、彼が加わるとこうも違うのかと。

改めて八神君の人気ぶりを目の当たりにした私は、スター選手のような扱いを受けている二人を二階席からまじまじと眺めた。