麗しの狂者たち【改稿版】




…………ああ、そっか。


これまで自分ではよく分からなかったけど、人に言われてようやく気付いた。

なんで、私はこんなにも”彼”にこだわっていたのか。



「否定したいんです。自分は無能ではないということを。決して”操り人形”なんかじゃないことを……」


だから、必死に抗った。

経営に向いていないという両親の固定概念から。

自分はただお嫁に行けばいいという、先の見えるレールの上から。

少しでも外れてみて、自己肯定感を高めたかった。


その”指標”となるのが、八神君で。

そんな彼に追いつきたくて、認めてもらいたくて。

気付けば盲目になっていたのかもしれない。



「本当よく似てるよな」

すると、暫く黙って私の話を聞いていた店長の口から、ぽろりと溢れた一言。

「え?何が……」

「休憩したら、接客は全部あんたに任せたからな」

その意味を追求しようとしたら、まるで逃げるように店長は踵を返してさっさと厨房の方へ行ってしまった。


一体誰に似ているのか。


言っていることは全く理解出来ないけど、最後の”任せる”という言葉がやけに重く感じて。

緊張感と同時に込み上がってくる少しの達成感に、自然と口元が緩んだ。