麗しの狂者たち【改稿版】







……やっぱり、私働くの向いてないのかな。




あれから、急いで伝票を厨房に渡して、お客さんには平謝りして。

少し慣れたと思って調子に乗った結果、周りに迷惑をかけてしまった。


これじゃあ、八神君の足元にも及ばない……




「たった数時間しか働いてないくせに、なに一丁前に落ち込んでんだよ」



団体客の注文が落ち着き、事務室で十分間の休憩をしている中。

これまでやらかした事を振り返り、深い溜息を吐いた途端。
いつの間にか背後に立っていた店長の鋭いツッコミが容赦なく飛んできて、思わず眉間に皺が寄る。


「確かにそうですけど、それでも皆さんにご迷惑ばかり掛けているのが申し訳なくて……」


これまで、何に置いても“完璧”を目指してきた。

それだけ努力をしてきたし、自慢じゃないけど周りにはそこそこ評価をされてきた。


でも、ここで求められているものは、いままでとは全く違うもので。

その現実を痛い程思い知らされ、私は再び深いため息をひとつはいた。




「始めから思ってたけど、あんたは何をそんなに焦ってるんだ?」


すると、意表を突く店長の問い掛けに、一瞬思考回路が停止した。


「…………焦ってますか、私?」


心当たりは全くないけど、何故か完全に否定することが出来ず、恐る恐る聞き返す。

「何かに追われている感じがする。この店の手伝いを買って出てきた時からそんな表情してた」

そう何食わぬ顔で、これまた痛い所を突いてきた店長の分析力を前に、私は思わず口を紡ぐ。