「おい。ぼーっと突っ立ってないで、早くこれ運べ」
「は、はいっ!」
すると、店長の厳しい一言ではたと我に返った私は、カウンターに並べられた沢山の料理を急いでテーブルへと運んだ。
それからは、お皿を下げて、洗い物をして、盛りつけのお手伝いをしたり、配膳したり、時たまお客さんの長話に付き合ったりと。
休む間もなく動きまわり、始めは不安で押し潰されそうになっていたけど、あまりの忙しさにいつの間にやらそんな思考はどこかへ吹き飛んでしまった。
「あの、和牛のサイコロステーキまだですか?注文してから結構経つんですけど……」
そして、仕事に慣れ始めた頃。
追加の料理を配膳していると、隣に座っていた若い女性客が恐る恐る尋ねてきて、その言葉に心臓がどきりと震える。
「すみません、今確認してきますので」
何だか嫌な予感がしてきた私は即座に頭を下げると、足早に厨房へと戻り、受信機の周りを捜索してみた。
すると、案の定。
床に一枚の注文票が落ちていて、拾い上げると、そこには“サイコロステーキ“という文字がばっちりと記載されている。
その瞬間、一気に血の気が引いて、私は暫しの間その場で固まってしまった。


