「あのさ。手当てするのはいいけど真面目にやってくんね?さっきから無駄に消毒液がしみるんだけど」


「す、すみません。何せ男性の裸は初めてなもので……」


沸き立つ邪念を何とか振り払い、八神君の引き締まった筋肉質の体に惑わされないよう必死に堪えるも、そう上手くはいかず、やはり苦情を言われてしまった。


しかし、これまで身内以外の裸を見たことがない私にとっては、とても無理難題なことで。


集中しようとしても、意思に反して心臓は暴れまくり手元がなかなか定まらない。


しかも、脇腹や二の腕や背中など思いの外広範囲に傷があり、服を脱がなければ手が届かない為、今に至る。
 




「……はい。終わりました」



そして八神君の裸と格闘してからかれこれ十数分が経過。


ようやく全ての傷にガーゼと絆創膏を貼り終え、一仕事終えた私は思わず深い息を吐く。


「もう、喧嘩はやめて下さい。それにお酒や煙草もダメです。早死にしてしまいますよ?」


それから、これまでずっと貯めに貯めていた不満をここで一気に吐き出し、私は八神君を軽く睨みつける。


「あんたって本当に何の遊びも知らなそうだな」


それなのに、全く響いてないどころか物珍しそうな目で再び凝視されてしまい、不覚にも鼓動が小さく高鳴ってしまった。