いつもと変わらない日々。


普段通り授業を受けて、午後の授業が終われば、生徒会へと赴き膨大な仕事を片付ける。


それから家に帰って課題をしていると、一日なんてあっという間に過ぎ去ってしまう。


そして、変わり映えのない朝を迎えれば、同じような日々がまた始まろうとする。




__でも、今日は違う。


いつものように制服を着て、鞄を手に持って、いつもの時間帯に家を出たけど、唯一同じではないもの。


それは、一泊二日出来るぐらいの荷物が詰め込んだ大きなボストンバッグ。



それをこっそり家から持ち出し、向かう先は来夏君の自宅。


いわゆる、家出というやつだ。



こんなことをして、状況が更に悪化するのは目に見えているけど、兎に角今の環境から少しでも抜け出したくて。


無理を承知で昨日思い切って来夏君に電話をしてみたら、あっさり承諾してくれたのだ。


来夏君の家は学校から近い為、途中まではいつもの通学路なので、私は人目を避けるためにも敢えて遠回りをする。



これまで無断欠席なんて一度もしたことがなかったので、学校をサボることがこんなにも怖く、恐ろしいものだとは知らなかった。


それを来夏君はこれまで平然とやってのけていたなんて。


つくづく彼の神経の図太さには恐れ入るというか、なんといおうか……。


でも、恐怖と不安が入り混じる中、一時的ではあるけど、しがらみから抜け出せるという開放感は堪らない。



真面目からの不真面目さ。


罪悪感からの達成感。


この真逆の感覚に何やら快感を覚え、普段から非行を繰り返す彼の気持ちが少しだけ分かる気がする。




……。



…………いや。



分かっちゃダメでしょ。



昂る気持ちに思考がつい変な方向へと進みそうになり、私は我に返ると慌てて軌道修正する。


そんなこんなで、あっという間に到着した彼のマンションの前。


時刻はまだ八時を過ぎた頃だけど、果たして起きているだろうか。


一応到着時間は知らせといたけど、マイペースな来夏君だから、まだ寝てる可能性も十分ある。


そんな不安に駆られながら、とりあえず着いたことを知らせる為、私は彼に電話を掛けてみる。