__それがいけないと気付いた時には、もう遅かった。



「やっ、来夏君。ちょっと待って、そこまでは許してな……あっ」


始めは服の上から胸を触られる程度で済んだのに、いつの間にやら上着を全部脱がされ、しまいにはスカートまで脱がされてしまい、下着一枚の状態で私は全身彼のキス攻めに遭っている。


その度に体が反応してしまい、淫らな声が止まらなくなって、またもや乱れ始めていく自分を何とか抑制しようと必死に足掻くも、彼の勢いは一向に止まらない。


挙げ句の果てには、ショーツの中にまで手を入れようとする彼の腕を咄嗟に掴み、私は思いっきり睨み付ける。



「もう、いい加減にしてっ!!」


そして、渾身の力を込めて一喝すると、流石にこたえたのか。


来夏君はぴたりと行為を止めると、大人しく私から離れていった。



「悪い。勢いが止まらなくなって」

それから、服を正して私達はリビングへ向かうと、来夏君はお詫びとして私の為に少し甘めに作った温かいコーヒを差し出してくれた。


「ありがとう。いいよ。もう気にしないで」


というか、思春期真っ只中の高校生男子を甘く見ていた自分が悪いと。


軽く自己反省しながら、私は笑顔でそれを受け取った。


来夏君と想いが通じてから、こうして私を大切にしようとする気持ちがひしひしと伝わってきて、その優しさが温かいコーヒーと共にじんわりと染み込んでくる。


亜陽君も優しかったけど、来夏君とは少し違うような……。


その差が何なのよく分からないけど、この幸せなひと時を噛み締めながら、私は何気なくリビングに置いてあった本棚に目を向けた。


「来夏君って経営学勉強してるの?なんか、難しい本がいっぱい並んでるね」


遊び人のイメージが強い彼には似つかわしくない程の参考書とビジネス本が本棚の半分以上を占めていて。


私は本のタイトル一つ一つに目を通しながら感嘆の息を漏らす。


「まあ、俺はこういう性格だから将来は経営者一択しかねえし。家業がどうなるか分からないけど、何に置いてもその知識は必要だから今のうちに詰め込んでおこうと思って」


「……凄い。やっぱり来夏君てそういう所、本当に格好いいよね」


普段は粗暴でいい加減で人の言うことなんて全く聞こうともしないのに、実は誰よりも将来のことを考えて、自分の考えをしっかり持っていて、それを実行している来夏君。


きっと彼に惹かれた一番の理由はそこかもしれないと。


改めて思い知った私は、率直な感想をそのまま口にした。