中は意外にも綺麗に保たれていて、余計な物が一切なく、とてもスッキリしていた。


広さは3LDKと、一人暮らしには大分スペースを持て余す程で。


こんな場所に高校生が一人で住んでいると知ったら、きっとこのマンションの住人達もかなり驚くだろう。



一先ず部屋に上がったものの。


自分は一体何処に座ればいいのかよく分からず、その場で狼狽えていると、来夏君は再び私の腕を引っ張り、有無を言わさず寝室の方へと歩き出した。


「ら、来夏君、ちょっと待って!」


一旦リビングで一息付くのかと思いきや。


早々にベッドに向かおうとする彼の行動に驚き、私は慌てて足の動きを止める。


「は?続きは俺の家でって言っただろ?ここまで付いてきて何言ってんだ?」


確かに。 


彼の言う通り、部屋に上がった時点で自分も何処か期待してしまっているのは否めない。


……でも。


「さっきまで白浜さんとしてたくせに、次は私って、いくらなんでも節操無さすぎでは?」


このまま、はいそうですかと流されるのは私の理念に反するので、ここは断固拒否したいところ。


「……あー。分かったよ。美月がそう言うなら我慢する」


すると、その意思が伝わったようで、来夏君は物凄く不満そうな表情をしながら渋々承諾すると、再び寝室へと歩を進めていく。


結局、彼の中では寝室に行かないという選択肢はなく。


半ば引き摺られるようにベッドの前に立たされた途端、来夏君は私を抱き締め、そのまま押し倒してきた。


「んっ」


それから、両手に指を絡ませ、私の上にのしかかってきた来夏君は、早速唇を貪るように奪い始める。


「もう、本当に来夏君って獣みたいだよね」


相変わらず手が早い彼に翻弄されまくる状況に少し悔しくなり、私は呼吸を乱しながら彼をジト目で見上げる。


「あんたのこと好き過ぎて自制できねーんだよ」


そんな視線を来夏君はしれっとした態度で受け止め、今度は包み込むように私の体を優しく抱き締めて、再び奥まで絡みつくキスを何度も落としてくる。



「……なあ、美月の体触っていい?」


暫く彼の甘さに酔いしれていると、突如弱々しく投げられた質問に私は一瞬目が点になる。


「急に改まってどうしたの?」


いつもなら有無を言わさず平然と触ってきてるのに、こんなしおらしい彼は初めて見たかもしれない。


「よくよく考えたら、もっと美月のこと大事にしないとダメだと思って」



なんということだろう。


あの来夏君からそんな言葉が聞ける日が来るとは。


それとも、白浜さんの件があって遠慮しているのか。


どちらにせよ、こんなに従順な姿を見せてくるのは私にとってかなりの反則技であり、胸の奥がぎゅうぎゅうに締め付けられる。


「……それじゃあ、少しだけならいいよ」


なので、愛しさが止めどなく溢れ出してくる想いに任せて、私はやんわりと微笑んで首を縦に振った。