いつだったか、手遅れになると危惧していたけど、今思うとなんて馬鹿げていたのだろう。
もはや、その時点で私はこんなにも囚われ、欲求を抑えられなくて、もうとっくに手遅れだったというのに。
「……ん。来夏君、ピアス冷たい」
そして、この感触もこれまで幾度となく味わってきたけど、昼間と違い、寒空の下では口ピアスの冷たさが更に増して、彼の唇が触れる度に小さく肩が震える。
「ああ、悪い。でもそれにいちいち反応する美月が可愛くて、余計興奮する」
「いや。ここで興奮されても困ります」
初めて来夏君に“可愛い”と言われて照れ臭さと嬉しさが入り混じるけど、なりふり構わず攻められるのも困るので、私は即座に制止を入れる。
すると、意外にもその要望をすんなりと聞き入れてくれて。来夏君は少し不満げな表情を見せると、ようやく私から離れた。
「それじゃあ、ここから先は俺の家だな」
そして、安心したのも束の間。
無邪気な笑顔で発せられた彼のとんでもない提案に一瞬目が点になると、無反応な私には構わず、来夏君は上機嫌に私の腕を引っ張ってこの場を後にしたのだった。
