__翌日。



「え?泊まりでデート?」



今日は久しぶりに二人で登校していると、突然提案された今度のデートプランに、私は目を丸くして亜陽君を見上げる。


「うん。今週末うちの別荘に二人だけで泊まらない?親の了解は得てるし、実を言うと美月の両親にも既に話は通してるんだ」



そして、抜かりなく事が進められていることに更なる驚きを隠せない私は、暫く唖然としながら彼を眺めた。




お泊まりだなんて。


まさか高校生でそんなデートが出来るとは思ってもみなかった。


……いや、もしかしたら世間的には珍しくないかもしれないけど。


小学生くらいまではよくお互いの家に泊まりに来ていたけど、二人だけというのは初めて。


つまり、翌日まで亜陽君とずっと一緒にいるということで、それって……



「……美月?もしかして嫌だった?」


すると、なかなか反応を示さない私の顔を不安げな表情で覗き込んできた亜陽君と視線が合い、私はふと我に返る。


「あ、ごめんね。そうじゃなくて、初めてのことだからちょっと緊張しちゃって……」


何を今更と心の中でそう呟くも、これまでキス以上のことをされつつある中、その先のことまでつい想像してしまう。


彼にそのつもりはないのかもしれないけど、いけない考えが止まらない自分が恥ずかしくなり、私は耳が熱くなるのを感じながら視線を足下に落とした。


「やっぱり美月可愛い過ぎ。大丈夫。君の貞操を奪う気はまだないから、安心して」


しかも、思っていることが全て筒抜け状態である事に、私の体は更に熱を帯び始めていく。


「あ、あの。亜陽君、私はその……」


誤解だと否定しようとしたけど、下手に良い子ぶるのも何だか嫌気がさしてきて。


言いかけた言葉を飲み込み、ここは素直に認めようと首を縦に振る。 



私は期待していたのだろうか。


それとも、何もないと言われた事にホッとしている?


これまでの私なら喜んで飛びつくような話なのに、今では少しの抵抗を感じてしまうなんて……。


その要因は全て彼なのだろうけど、改めて浮き彫りになる来夏君への想いに段々と恐怖を感じ始め、私は余計な考えを無理矢理振り払った。


兎に角、この動揺する気持ちを亜陽君に悟られたくなくて。


それからは、デートプランの話に集中し、いつものようにたわいもない会話を楽しみながら朝の時間を過ごす。