きみのためならヴァンパイア




陸君が懐から取り出したのは、銀のピストルだった。


「ーーなんで、そんなもの……っ」


それは、ヴァンパイアハンターしか持ちえない武器のはず。


「ね、いいでしょ。これね、俺の切り札」


陸君に気を取られていると、急に男のくぐもった声が聞こえた。

声のした方を見ると、後ろ手に縛られた紫月が、自由なままの脚で男を蹴飛ばして抵抗している。


「……おい、こっち見なよ」


陸君の不機嫌そうな低い声に、紫月が私たちを見た。

その一瞬で、紫月の周りの男たちが紫月を拘束する。

しかしそれにも動じず、紫月は陸君を睨めつけた。


「陽奈ちゃんがここにいるのにさぁ、そんなに暴れてだいじょーぶ?」

「……陽奈に手ぇ出すなよ。てめーらの目的は俺なんだろ」

「そーだね。陽奈ちゃんの血、まずいし。用が済んだら逃がしてあげる。それに俺だって同胞殺しは嫌だからさ、ほら、これで許してやろうかなって」


紫月はピストルを見てから、目線を一瞬、下に向けた。

そこには男の一人が落としたであろうスマホがある。

ディスプレイには時刻表示。

何故だかわからないが、紫月はそれを見て舌打ちをした。


「まー、安心して。あんたの記憶がなくなったって、面倒見たがる奴を知ってるから」


陸君は、紫月にピストルの銃口を向ける。