きみのためならヴァンパイア




そこに現れた人影に、あのときを思い出す。

私が、ヴァンパイアの王様と出会った、あのとき。

あのときも今と同じように、鉄製の扉をものともせず蹴飛ばして、私の危機に駆けつけてくれた。


「ーー誰に、誰が用済みだって?」

「紫月……っ!」

「……悪い、遅くなった」


紫月は全身ボロボロだった。

誰のものかはわからないが、ところどころに血液も付着している。


「ふっ、ははっ、来たよ! マジか、これのために? 最高!」


陸君に腕を強く引かれて、痛みに思わず顔をしかめる。


「用済みだの、これだの、そいつは物じゃねーんだよ。離せ」

「用済みにしたの、あんたじゃん。稀血をよくも台無しにしやがったな」

「台無しも何も、陽奈はてめーらのエサでもない。俺は稀血なんかどうでもいいんだよ」


そんな場合じゃない。そんな場合じゃないのはわかってるけど、紫月が私をエサじゃないと言ってくれたことが、うれしかった。

私は紫月にとって、デザートってだけじゃなかったんだ。


「へー、そんな感じ? ヴァンパイアの王様ともあろうものが、人間風情に絆されてんの……本当に邪魔だよ、間宵紫月。あんたはヴァンパイアの敵ってことだ」


陸君、ともりで初めて会ったときは、紫月に会えてうれしいなんて言ってたのに。

本当は、紫月のことをそんな風に思っていたなんて。


「邪魔なのはてめーだ、陽奈を返せよ」

「いーよ? あんたが消えてくれたらね!」