「なんでそんなーー紫月に何するつもり?」
「聞いてどうすんの? どーせなーんもできないでしょ」
「……それはっーー」
図星だった。
現に、会話に乗じて抵抗を試みるも、私の力では陸君は微動だにしない。
「……それにしても、遅いね。陽奈ちゃん、見捨てられちゃったのかなぁ?」
「そんな、紫月は……」
紫月は、きっと私を見捨てたりしない。
それがわかるのは、今までの紫月がそうだったから。
ーーけれど、稀血の話が陸君の言う通りだとしたら、今の私の血は紫月にとってもおいしいわけじゃないのだろう。
それに、私はもう、私を守って紫月が傷つくのは嫌なんだ。
それなのに、助けに来てほしいなんて願わずにいられない。
そんな自分に嫌気がさして、思わず涙が溢れてしまう。
「泣くなってーーあー、いや、もういっか。血、いらねーし。泣きなよ、好きなだけ。見捨てられて悲しいんでしょ、よしよし」
そういうわけじゃない。
陸君に私の気持ちなんかわからないし、わからなくていい。
紫月が来ないとしても、来るとしても、私はじっとしているわけにはいかない。
それなのにどうして私は、陸君ひとりから逃げることすらできないんだろう。
「……ま、仕方ないよね。だって陽奈ちゃん、もう稀血じゃないんでしょ。せっかく極上のごちそうだったのに……混ざった血なんて残飯以下だよ。そりゃあ、あいつにとっても、陽奈ちゃんは用済みだよねぇ?」
ーーガシャン!
突如、大きな音が聞こえて、それと共に遠くで扉が吹き飛んだのが見えた。



