きみのためならヴァンパイア




……カプセルはいっぱいあるし、ちょっとだけ私が持っててもいいかな。

ほら、何かあるかもしれないし?


自分に言い訳しながら、カプセルを3つほどポケットに忍ばせる。

正直なところ、紫月の血液が入ってると思うと、それを肌身離さず持っていたかっただけだ。

自分ながら、ちょっと気持ち悪い願望だとは思うけど。


……自分が紫月に抱く思いが叶わないのはわかってる。

だからせめて、紫月をちょっとだけ自分のものにするくらいは許してほしい。

もし紫月にバレたら、お守り代わり――と言えば聞こえはいいかも。


私はポケットの中のカプセルを指先で確かめながら、寝室を後にした。





――その日の夜、夢をみた。


私の前に、五人の背中が見える。

見えるのは後ろ姿だけど、知らない人だとわかる。

右から背の高い順に並び、男の人、女の人、少女、男の子、男の子、といった感じだ。

なんとなく、彼らは家族のように思えた。


彼らの見据える先には、いつの間にか私の父親が立っていた。


夢なのはわかっているし、私は本当にここにいるわけじゃない。

誰も私のことを認識している様子はない。

だけど、なぜだか怖くて仕方なかった。


顔にかげが差して表情の読めない父親は、懐から銀のピストルを取り出して、男の人に銃口を向ける。


――やめて。

そう思うのに、声が出ない。目をそむけることもできない。


やがて父親は引き金をひいた。