「有名人?」
「王様でしょー、紫月君」
まあたしかに。王様なんだから、ヴァンパイアの間では有名人どころじゃないのかも。
「で? それ目当てでここに来たのか」
懐っこい陸君とは正反対に、紫月は警戒心むき出しだ。
「まさかぁ。知り合いに勧められた店に来てみたら、バイト募集中だったから、やってみよーかなって思っただけ」
あ、紫月、納得してない顔してる。
二人の間に首を突っ込むのはやめておこう、そう思ったとき、陸君に腕を掴まれた。
「そういえば陽奈ちゃん、ラテアートできる? さっきマスターに教わってたんだけどさ、あっちで俺の見てよ」
「え、ああ、いいけど……」
「おい」
「紫月君も見たいの? 俺の作品」
「は? 冗談も大概にしとけよ」
「はは、りょーかい。行こ、陽奈ちゃん」
陸君に手を引かれながら、キッチンの方へ向かう。
その間ずっと、不機嫌全開の紫月の視線が背中に突き刺さるのを感じていた。
……後で怒られるかなぁ。
そんなことを考えてぼうっとしていると、陸君に頬をつつかれた。
「ねぇ、こっち見て?」



