きみのためならヴァンパイア




男の人は気だるげな雰囲気を醸し出している。

色素の薄い金髪に黒いマスク、耳を飾るたくさんのピアスが特徴的だ。


「そうだ、紹介するね。彼、(くが)君。アルバイトしてくれる新人さんだよ」

「よろしくねー。ね、それ、俺にもちょーだい?」


陸君はマスクを下げて、それで私や紫月と同い年くらいの顔立ちだとわかった。

彼の口からは立派な牙が覗いていて、それはもう一瞬でヴァンパイアだとわかるほどだ。

陸君が指さしたのは私の方――に見えたが、そんなはずもなく、彼の目線はマスターの持つクッキーに向いている。


「僕はいいけれども……いいかな、陽奈さん」

「あっ、全然、いいですよ!」

「どーも」


陸君が食べたのは、一番綺麗に焼けたクッキー。

べつに全然構わないけど、本当はマスターに食べてほしかったな。


「うま。じょーずだね、陽奈ちゃん」

「あ、あはは、ありがと……」


陸君は私に近づいて、私の頭をぽんと撫でた。

距離詰めるの、ちょっと早くない?


「……あれ、怒っちゃった? 紫月君」


陸君の言葉に紫月を見ると、冷たい眼差しを陸君に向けていた。


「……馴れ馴れしく呼ぶな」

「そんなこと言わないでよ。有名人と会えてうれしーの、俺」